特別講演2

御池山の隕石クレーターの研究過程 〜長野県飯田市上村しらびそ高原の御池山〜

講師:坂本正夫 さん □日本唯一の隕石クレーター研究者  飯田市美術博物館客員研究員

《経歴》
1947年 長野県長野市生まれ
1971~2007年 長野県内の小中学校教員として勤務
2008年 飯田美術博物館 専門研究員
2018年 飯田美術博物館 客員研究員
現在 南アルプスジオパーク学術部員・伊那谷自然友の会員・日本地質学会員・日本惑星科学会員・日本歴史地震研究会員

《研究歴》 南アルプスの地質と化石の研究 南アルプスの中央構造線の研究 御池山隕石クレーターの研究  遠山地震の災害研究 伊那谷の活断層の研究 根羽火山と地質・断層の研究

【講師推薦理由】
AIがマニュアル的判断を代行するようになってくると創造的職業だけが生き残るといわれています。我々臨床家が身に着けるべき創造性とは何でしょうか。その答えを示してくださるのが坂本正夫先生です。飯田市で活躍しておられる坂本先生は学校の先生でありながら日本唯一の隕石クレーター研究者です。そして数十年の研究のすえに飯田市に隕石クレーターがあることを証明されました。地質とクレーターに関する面白いお話しを伺いながら、地域で研究する上での矜持を教えていただきます。

医療者の創造性はおよそ研究と言い換えることができるでしょう。臨床家の医療研究はどういった展望があるでしょうか。EBM(evidence based medicine)は薬物治療を中心に統計学的手法による研究を活発にしました。EBM研究は集団を対象とした研究であり、研究そのものが大規模化する傾向にあるため臨床家主導とはなりにくく、また個人へのあてはめにはあいまいさがあるのが弱点になります。いま遺伝子解析の進歩とiPS細胞の発見によりGBM(gene based medicine)へ進み始めています。GBMはMBM(mechanism based medicine)つまり演繹として個人レベルに適合する医療を作り出すための研究です。GBMはミクロレベルかつ総当たり的な研究が必要となり、多大な資金や高速コンピューターによるシミュレーションが必要で、一般の大学や臨床家の手から離れた研究になります。
さてMBMはミクロだけではありません。マクロの研究も当然可能です。遺伝子ではなく、人や社会を観察して法則性(mechanism)を見つけ出す研究です。Macro Mechanism研究は患者を通じた事象の観察が必須ですからまさに臨床現場でのみ可能といえるでしょう。Macro Mechanism研究こそが臨床家を創造的に保ってくれるでしょう。

坂本先生は隕石クレーターが好きで研究されているのではないのでした。南アルプスに横たわる数億年前の地層を研究されておられるうちに説明のつかない地層の変化に出くわしたそうです。なぜ説明できないのか。あきらめずに探求するうちに隕石クレーターの仮説にたどり着かれました。当初は村おこしのためにでっち上げているとか非難されることもありました。しかし冷静に長期にわたる研究をすすめて来られました。一つ一つ証拠集めを約40年。今では日本唯一の隕石クレーターとして知られるようになってきました。
坂本先生は小中学校の先生をしながら地質研究をしておられました。そして日本に隕石クレーター研究者がいない中で、隕石クレーターの先行研究をもとに研究計画を立て、様々な研究所を巻き込んで実行しています。

私たちも目の前におられる患者から矛盾を感じたとき、丹念かつあきらめずに論理的に説明できるまで追求しなければなりません。追及に疲れたり、あきらめそうになった時、坂本先生のような先達がおられることに力をいただけると思います。

推薦者:第29回神経リハビリテーション研究会 実行委員長 健和会病院 福村 直毅